コンビニやスーパー、百貨店の莫大な“食品ロス”を防ぐには? 消費者側の意識改革も課題

世界全体で目指す、17の目標からなる「SDGs」の一つ「つくる責任・つかう責任」。とりわけ、食べられるのに捨てられる食品、いわゆる「食品ロス」も解決しなければならない問題だ。年間13億トンを超える世界の「食品ロス」。その一方、11人に1人が飢餓に苦しんでいるという事実もある。

 日本でも、食品ロスの量は年間600万トン以上に及ぶ。

日本フードエコロジーセンター(神奈川県)では、お弁当のおかずや果物、麺など、一日に35~36トンの食品廃棄物の受け入れ行っている。よく見ると、消費期限内のものも含まれている。「これは消費期限が明日なので、今すぐ食べても問題ないようなパンだ」と、代表取締役の高橋巧一氏。「賞味期限切れのものを置いてと消費者からクレームが入ってしまう。だからそうなる前に廃棄してしまおうということだと思う」。

これらは基本的に焼却処分されることになるが、地球温暖化を引き起こす要因の一つとされる二酸化炭素の排出にもつながる。そこで同社では殺菌・発酵処理おこない、豚のエサも作っている。このエサで育てたものはブランド豚として認証されている。

東京日本橋にあるパン屋「BOUL’ANGE」のシェフの矢澤央さんも長年、パンの売れ残りに頭を抱えてきた。生地の種から作るため、3日後の需要を予測しなければならないが、新型コロナの影響もあり販売数がより一層読みづらくなった。売れ残りを加工することで翌日に販売できる商品もあるが、それでも月に30kgほどの廃棄が出ているという。

 「パンを作り上げるまでにたくさんの方の思いや工程が入っているので、廃棄するのは心が痛い」、そこで利用を始めたのが、廃棄が予想される商品を値引きしてアプリに出品。ユーザーは定価よりも安く消費を購入でき、お店も商品を廃棄することなく売り上げアップにも繋がる「TABETE」というサービスだ。

日は通常1680円(税込)するパンの詰め合わせを680円(税込)にしてアプリ内で出品、購入者は会社帰りなどに商品をピックアップしていく。購入した男性は「残ったものを売るということをやっているところは少ないので、取り組みとしては今の時代には必要になってくるのではないかと思う」と話した。

 こうした努力もあり、現在では廃棄は10kgほどにまで減らすことができ、この日も廃棄が見込まれていた50個全てを売り切ることができた。

私たちに身近なコンビニでは、加盟店1店舗につき、1日におよそ19個ものおにぎりが廃棄されているといい、弁当なども含めれば、実に年間の廃棄ロス額は468万円分にも上るという(公正取引委員会調べ)。

 既存店からコンビニ経営を引き継いだという丸尾順子さん(仮名)は、当初半年間は本部からの指導もなく、従来の発注量を踏襲した結果、1カ月の廃棄額が最大で約80万円に達したこともあったと明かす。

 「並んでいる品物が少ないとお客様が来てくれなくなるのではないか、という“恐怖感”みたいなものが出てきて、過剰に発注してしまうこともあった。ただ、余ったおにぎりなどをバイトの子たちにあげることは禁止だし、値引き販売も基本的には“やってはいけないこと”になっていたので、消費期限の数時間前になると廃棄する。最近では期限の少し前に値引きすることもあるが、主婦の経験もある私からすると“これ、捨てていいのかな”という罪悪感がある。ただ、本部の人は“廃棄は捨てるのが当たり前”という感じだ」。

ジャーナリストの井出留美氏は「2009年6月にコンビニ最大手が公正取引委員会から排除措置命令を受け、値引き販売を禁じることは優越的地位の濫用だと判断された。しかし私の取材経験でいえば、今も大半の店舗は廃棄を選んでいると思う。やはり値引きで契約を切られた契約店の話などを聞くと怖くなってしまうのだと思う。また、日本のコンビニ特有のシステムで、売れ残ったものについてはお店が負担しているものの、見かけ上は売れ残りが存在しなかったというように処理され、本部の粗利の取り分が多くなるという“コンビニ会計”と呼ばれる仕組みもある」と説明する

その上で「特に全国展開しているコンビニやスーパーが強く、メーカーやオーナーさんが商売を続けるために我慢しないといけないというような現状を変えなければいけないと思う。その点は大手コンビニも食品ロス削減に向けて取り組みを始めており、改善はされてきている。たとえば今年の2月3日の夜、百貨店やスーパー、コンビニなど101店舗について恵方巻の売れ残りを調べてみた。すると、19時くらいで完売している店舗が去年よりも増えていた。去年はデパ地下だけで272本が残っていたので、これが全国で起きていると仮定すると、16億円の経済的損失になる計算だった」とした

井出氏は同時に、消費者側の意識の問題も指摘する。「手前に置いてある、期限が近づいたものではなく、後ろの方から取っていくので、結局は廃棄せざるを得ないというオーナーさんの嘆きはある。また、日本は安全性を気にしすぎる、ゼロリスク志向がある。それが“何かあったらうちの責任だ。だったら捨てた方がいい”という発想を生む。そういう点では消費者も変わった方がいいと思うし、値引き販売をして欲しいと声を上げることも大切だと思う」。

その上で井出氏は「企業と家庭に切り分けて考えると、企業に関しては欠品が許されず、スーパーやコンビニの本部からは100個納めなさいと言われ納められなかったらペナルティだ。だから余分に作らざるを得ない。それをやめて、適量を作って“売り切り御免”でいいよねということにしなければならない。また、家庭では本来、あるもので料理をし、ないもの買いに行っていたはずだ。コロナ禍によって、色んな国の家庭で食品ロスが減っているのも、買い物にあまり行けなくなったから、あるものを使おうという傾向になっているからだ。ある人の言葉で言えば、“もっともっと”と欲張ってしまうのがいけない。“足るを知る”ということだと思う」と話していた。