子どもに美しい地球を残せるか SDGsは「自分ごと」

 国連でSDGs(持続可能な開発目標)が採択されて5年がたった。SDGsを経営の指針に据える企業は増えてきているが、浸透にはまだまだ課題がある。総合スーパーのユニー(愛知)と居酒屋のワタミ(東京)でSDGsに取り組み、中部SDGs推進センターの副代表理事を務める百瀬則子さん(63)に、現状を尋ねた。

――長年、企業のなかで環境の取り組みをリードしてきました。

 「スーパーのユニーで、消費者が物を買うことで環境や地域に貢献できる『エシカル消費(倫理的消費)』に力を入れました。牛乳パックを回収し、トイレットペーパーに再生してプライベートブランド(PB)で販売するといったことです。SDGsの目標の一つ、『つくる責任つかう責任』に合致していると感じました」

 「ユニーでは食品リサイクルにも取り組みました。残ったパンや野菜を豚のエサに加工し、育った豚の肉をPBで販売したのです。居酒屋のワタミに移り、同じシステムを採り入れました。ワタミは高齢者向けの弁当宅配も手がけ、愛知県の工場で毎日6万食をつくっています。余った食材を鶏のエサに加工し、鶏卵を買い取ってマヨネーズにして弁当につかうしくみです」

 ――ワタミではほかの外食4社と組み、飲食店で出た調理くずなどを鶏のエサにする取り組みも始まりました。

 「ライバルどうしがこのような協力をするのは初めてのことで、全国に広げたいと考えています。食品を扱う商売をする責任を感じてリサイクルに取り組む企業を、消費者には選んで、買って、食べて応援してほしいです」

 「小売業や外食産業は、何を選べば子どもたちのために美しい地球を残せるのか、消費者にもっと訴えなければいけないと感じています。消費者にはSDGsを知ってもらい、どんなライフスタイルを選ぶのか、SDGsを一つの基準にして考えてほしいです」

 ――SDGsはまだ、十分に浸透しているとは言えません。

 「大事なのは『自分ごと』にすることです。SDGsには17の目標を表すマークがあります。私はSDGsの実践について中小企業やお店でお話しするとき、『あなたはどれにいちばん関心がありますか』と聞くんです。たとえば目標14の『海の豊かさを守ろう』を選ぶ人がいます。理由を聞くと『僕は魚釣りが好きだから、魚がいなくなったら困る』と答えが返ってきます」

 「このように、最初は自分の気になるマークを選べばいいのです。そしてターゲットに何が書いてあるかを調べ、自分に何ができるかを考え、行動しましょう。『プラスチックごみのせいで魚が危ないらしい。レジ袋をもらうのをやめよう』。それが重要です」

 ――コロナ禍で、SDGsの後退が心配されています。

 「テイクアウト(持ち帰り)が急増し、容器のプラスチックごみが増えたと言われます。電車より車が安心だから車で移動する、という人もいるでしょう。自分や家族の命、仕事を守ることはもちろん大切。でも今だけでなく、100年後のことも考えなければいけないと思います」(竹山栄太郎)

〈ももせ・のりこ〉 横浜市出身。酪農学園大卒。1980年、ユニー入社。環境社会貢献部長や上席執行役員を歴任。退社後の19年2月に中部SDGs推進センターを設立、副代表理事に。19年4月からはワタミのSDGs推進本部長も務め、現在は執行役員を兼任する。63歳。

〈SDGs(エスディージーズ)〉 2015年9月に国連で全会一致で採択された「持続可能な開発目標」(Sustainable Development Goals)。貧困の撲滅や格差解消、環境保護などの17分野の目標と169の具体的な課題(ターゲット)があり、30年までの達成をめざす。